先日、ある社長さんと雑談していた時に、有給休暇の話が出まして、「うちも有給の管理簿を作らなあかん?」と言っておられたので、「社長、有給の管理簿(年次有給休暇管理簿)は(労働基準法で規定された)法定帳簿(義務)ですよ」とお伝えしました。法定三帳簿が整っていない会社は少ないですが、平成31年4月から追加された「年次有給休暇管理簿」は「法定四帳簿」としてまだまだ浸透していないところもあります。今回は、労務管理の基本の基を見ていきたいと思います。
🔴法定四帳簿とは
🔴法的根拠
労働者名簿
労働基準法:第107条
「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。」
賃金台帳
労働基準法:第108条
「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」
出勤簿
労働基準法に明確な記載はありませんが、厚生労働省のガイドラインに出勤簿の保存に関する記載あり。
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならない。」
年次有給休暇管理簿
労働基準法施行規則:第24条の7
「使用者は、有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間保存しなければならない。」
🔴記録の保存
労働基準法:第109条
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない。」
労働基準法:第143条
「第109条の規定の適用については、当分の間、同条中「5年間」とあるのは、「3年間」とする。」
※保存期間は「当分の間は3年間」とされていますが、「原則は5年間」ですので今後の改正も踏まえて5年間保存しておいた方が望ましいです
※賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は、7年間の保管が必要になります。
🔵書類の保存に係るQ&A
Q:労務関係の書類をパソコンで作成して保存したいのですが、可能でしょうか。
A:労働基準法第109条では、労働者名簿、賃金台帳、雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない、と定めています。これらの書類をパソコン上で作成して保存するには
(1)法令で定められた要件を具備し、かつそれを画面上に表示し印字することができること。
(2)労働基準監督官の臨検時等、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっていること。
(3)誤って消去されないこと。
(4)長期にわたって保存できること。
などの要件を満たしていなければなりません。
出所:厚生労働省「労働基準法に関するQ&A」
🔴罰則
労働基準法:第120条
「労働基準法、第107条から第109条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。」
※ただし、有給休暇を10日以上付与した従業員に対して、年5日以上取得させなかった場合は、従業員1人あたり30万円以下の罰金を支払わなければなりません。
🔴記載事項
🔴法定帳簿のよくある指導事項
労働者名簿
・退職者の労働者名簿を廃棄
・名簿に退職年月日や退職事由、履歴を記載していない
・名簿に本籍が記載されている(平成9年法改正で必須項目から削除)
賃金台帳
・保存期間中(3年)の賃金台帳を廃棄
・賃金計算期間(〇月分、〇月〇日~〇日など)の記載がない
・労働時間数、残業時間数、深夜労働時間数などの記載漏れ
・事務委託した会社や社労士に台帳を預けたままで、すぐに台帳を確認できない
出勤簿
・保存期間中(3年)の出勤簿を廃棄
・押印など出退勤の確認のみで、始業・終業時間が記載されていない
・休憩時間の記載がない
年次有給休暇管理簿
・作成義務を知らず未作成
・付与日と付与日数の記載がない
・具体的な取得日が記載されていない
今回は法定四帳簿について基本事項を見てきました。最近はDX化も進み、クラウド型や業務ソフトを使って管理されている会社も増えてきました。労務管理は労働基準法や労働契約法など、法律の知識も少なからず必要になってきます。まずは基本のところを押さえて頂いて、自社に合った運用をして頂ければと思います。年次有給休暇管理簿については、顧問先様・関係先様で必要があれば無償提供しておりますので、お気軽にお声がけ下さいませ。