パブリックコメントを提出したことがありますか?の問いに、大多数の方がパブリックコメントって何?という状態だと思います。恥ずかしながら私もコメントを提出したことはなく、制度自体も最近になって知りました。ただ、この制度を意識することによって現在どのような法改正やルールが変更されようとしているのかということが見えてきます。今回はパブリックコメントについて共有していきたいと思います。
🔴パブリックコメントとは
国の行政機関が命令等(政令、省令など)を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的としているとあります。
つまり「このような命令等を定めるから、意見がある人は言ってね。行政としては意見を求めた後に制定しているから、勝手に運用している訳ではないですよ」という立て付けになります。
パブリックコメント手続きの流れ
出所:内閣府「パブリックコメント制度(意見公募手続制度)の概要」
🔴法的根拠
行政手続法:第39条(意見公募手続)
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料を「あらかじめ公示」し、意見の提出先及び意見の提出のための期間を定めて広く「一般の意見」を求めなければならない。
同条2項
意見提出期間は、公示の日から起算して「三十日以上」でなければならない。
行政手続法:第41条(意見公募手続の周知等)
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について「周知」するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する「情報の提供」に努めるものとする。
行政手続法:第42条(提出意見の考慮)
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての「意見を十分に考慮」しなければならない。
出所:e-GOV法令検索「行政手続法」
🔴パブリックコメントに対しての問題点
認知度の低さ
Q:パブリックコメント制度を知っていますか
Q:これまでにパブリックコメント制度を利用し、意見を提出したことがありますか?
出所:上越市「パブリックコメント(市民意見提出制度)」アンケートの成果」
わかりづらさ
・パブコメ資料は、なかなか市民の目に触れて貰えていないのでは。認知されていないのもあって、興味・関心を招きにくいのではないか。
・パブリックコメントは、政策立案過程の最終段階で実施する制度。ある程度内容が纏まった段階で公表されているものであることから、「専門家」で無い限りなかなか「意見を挟む余地はない」のではないか。
出所:守山市「効果的なパブリックコメントの実施に向けた手法の改善について」
🔴新着のパブリックコメント
各省庁のパブリックコメント 出所:e-Govパブリック・コメント「案件一覧」
🔴弊所がある東大阪市の2024年度パブリックコメント
合計10案件で、意見の件数:194件、意見の送信者:49名
意見の送信者が重複していないと仮定しても、東大阪市の人口:484,651名のうちの0.01%(1万人に1人)となり、先述の認知度やわかりづらさの面が影響していると考えられます。
出所:東大阪市「パブリックコメントの結果公表(令和6年度)」
先日、パブリックコメント「福島第一原子力発電所の事故後に除染で取り除かれた土の再生利用に関する基準案」で20万件という意見が集まりましたが、約96%がコピー&ペーストであったということが判明したという報道がありました。意見が多く集まるだけが良いわけではなく、政策が国民の目に届き、それが理解でき、意見がある方が意見を述べるという流れになっていない気がします。各省庁も行政も素晴らしい資料を作成し公表していますが、認知されていないために見る人が限られるという問題点があります。メディアも芸能やゴシップなど面白い部分もありますが、国の政策など一般的に難しいことをわかりやすく伝えることも社会の公器として必要なのではないでしょうか。