ビジネスマンなら一度は耳にしたこともあるかも知れない、VUCAとVANI。これは各単語の頭文字を取った言葉で、特に海外HRのトレンドで良く出てきます。今から5年前に経済産業省が「日本企業の経営競争力強化に向けて」という題目で「9つの提言」をしています。その中でもVUCAが記載されていますが、その未来予測は日本が抱える課題を的確に表してきました。そのVUCAの時代からVANIの時代へと移り変わろうとしています。本日は、ビジネスや人事領域で知っておいた方が良いと思われる3つの言葉(VUCA・BANI・ティール組織)について共有していきたいと思います。
🔴VUCAとは
元はアメリカで使われていた軍事用語で、米ロの冷戦が終結し、複雑化した国際情勢を指す言葉として使われていました。その後、2010年代に変化が激しい社会での重要な概念としてとしてビジネスでも利用されるようになりました。
昭和から平成、令和にかけて、高品質な製品を大量生産することで日本は大きく発展した。しかし、今ではモノが溢れ、物質的な不足で人々が困ることも少なくなった。そのような背景の下、魅力的なビジネスモデルや市場も即座に成熟化・陳腐化している。次々と生まれる革新的なイノベーションは、あらゆる産業の土台を揺るがしている。グローバル経済が互いに深く連鎖し、その関係性が複雑化している。我々はまさに「VUCAの時代」を生きており、世界は目まぐるしいスピードで変化している。
出所:経済産業省「進化し続ける組織へ」
VUCAの時代には、情報が急速に変化し、予測が難しくなるため、主体性の高いチームの育成が重要です。これは、チームメンバーが自主的に行動し、問題を解決する能力を持つことを意味します。Googleの検証では、主体性の高いチームの育成に最も重要な要素は「心理的安全性」だという事が示されました。
🔴人材競争力強化のための9つの提言
①経営戦略を実現する重要な要素として人材および人材戦略を位置づけること
・ヒトが生み出す価値の重要性が増し、経営課題と人材課題が表裏一体となる中で、経営戦略の策定段階から、人材および人材戦略が検討に組み込まれているか?
・短期的、場当たり的な人事施策ではなく、経営環境の変化のスピードと幅の広がりに対応できる人材および人材戦略を構築し、実行できているか?
②多様化する個人のあり方をふまえ、個人と企業の双方の成長を図ること
・従来の日本型雇用コミュニティが変化しつつある中、個人のスキルや専門性を最大限に引き出すために、多様な人材の成長や活躍に繋がる機会を提供できているか?
・経営競争力を強化するために、多様な人材を自社に惹きつけ、自発的な貢献意欲を引き出す仕組みを構築できているか?
③経営トップが率先して、VUCA時代におけるミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること
・ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を単なるスローガンとせず、経営トップ自らが信念をもって発信することで一人一人に腹落ちさせ、具体的行動につなげられているか?
・世の中に変革を起こすリーダーの存在が企業の命運を握るVUCA時代において、保守的な減点主義や過度な完璧主義にこだわり、イノベーションの芽を摘んでいないか?
④経営に必要な多様な人材確保を可能とする、外部労働市場を意識した柔軟な報酬制度・キャリアパスの整備
・外部競争力のある人材を、自社の報酬・評価体系に無理矢理ねじ込もうとしていないか。「人材の自前主義」にこだわらず、その能力を発揮できる環境を整備できているか?
・多様なスキル、キャリアを持った人材のニーズに応じた柔軟な仕組みやキャリアパスを用意できているか?
⑤変革や人材育成を担う経営人材、ミドルリーダーの計画的育成・支援
・内部公平性を重視した「横並び方式」で経営人材を育成するのではなく、トップアジェンダとして、時代をリードし変革を起こす人材を早期に登用し、育てられているか?
・ミドルは経営の意思を現場に伝え、現場の実感を経営に伝える「橋渡し役」。人材戦略の中で、こうした役割を明確に位置付け、計画的な育成ができているか?
⑥個人の挑戦や成長を加速させ、強みを活かした企業価値の創出に貢献する企業文化や評価の構築
・処遇のためだけの人事評価ではなく、多様な個人の成長を促し、同時に経営目標の実現への挑戦を評価できる仕組みを構築できているか?
・「心理的安全性」を高め、多様な個人が積極的に活躍できるような企業文化づくりを経営層やミドルリーダーが率先することで、組織の潜在力を最大化できているか?
⑦個人の自律的な成長や学び直しを後押しし、支援する機会の提供
・変革の時代を生き抜くためにも、経営層が「不断の学び直し」の必要性を発信し、社内に「健全な危機感」を醸成できているか?
・働き手一人ひとりに対して、評価などの仕組みの中で新たな学びの気づきを促すとともに、社内外での主体的な学びの機会を提供できているか?
⑧個のニーズに応え、経営競争力強化を実行する人事部門の構築
・経営課題と人材課題が表裏一体となる中、人事部門は経営競争力を実現する能動的な部門として、事業や経営をリードする役割・機能を与えられているか?
・人事部門は、「勘と経験」だけに頼るのではなく、テクノロジー等も活用しつつ、データに基づく「客観性・納得性」を持って、自社の人材力・経営力の強化に貢献できているか?
⑨経営トップ自ら、人材および人材戦略に関して積極的に発信し、従業員・労働市場・資本市場との対話を実施
・自社の人材投資を、単にコストとしてだけでなく、持続的な企業価値創造を支える中長期の投資として明確に位置付け、発信できているか?
・人材・人材戦略と企業価値向上の関係性を明確にしたうえで、各社の経営戦略に基づくKPIを設定し、社内外のステークホルダーと建設的な対話を実施できているか?
出所:経済産業省「人材競争力強化のための9つの提言」
🔴日本の過去の優位性と現状の課題
本日はVUCAについて見てきました。VANI・ティール組織まで記事にしようと思っていたのですが、思いのほかボリュームが多く、続きは明日に回したいと思います。