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退職代行サービスと企業の対応策について

近年、退職代行サービスを活用して会社を辞める方が増えているという報道を目にする機会が増えてきたように思います。退職代行サービス自体は以前からあるサービスですが、ある代行業者の「モームリ」というキャッチ―な名称も相まって露出が増え、注目されはじめたのかも知れません。実際に知人の会社でも代行業者から連絡があったという話を聞き、そんな時にどう対応すれば良いのか等をケーススタディとして見ていきたいと思います。


🔴退職代行サービスと退職の定義

退職代行サービス

退職を希望する本人に代わり、退職の意向を会社に伝えるサービスのこと。

退職代行というサービスを知っている割合

出所:エン・ジャパン「7700人に聞いた「退職代行」実態調査


退職

「使用者と労働者の雇用契約が終了する」こと。

一般的に就業規則などに「退職する場合は退職予定日の1ヶ月前までに申し出ること」というように定めている会社も多いので、退職手続きがどうなっているか調べることも必要。(使用者が「合理的な労働条件」が定められている就業規則を労働者に「周知」させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする:労働契約法7条)

原則

※原則を表示しています。例外もありますのでご注意下さい

※労働者側の一方的な退職の申し出は「辞職」と定義されることも多い

出所:厚生労働省・確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど


🔴退職代行サービスを利用する理由

出所:エン・ジャパン「7700人に聞いた「退職代行」実態調査


🔴3種類の代行業者 特徴

 

出所:ベンナビ労働問題「退職代行サービスの依頼金額はいくら?料金相場や費用による違いを解説


🔴職種・業種別利用者数TOP10

出所:退職代行モームリ「職種別利用者数


🔴電話がかかってきたときの対応

ある日突然、会社の電話に連絡が入ります。

「お世話になっております。退職代行サービス●●の△△と申します。御社の××部に在籍されている****さんより、退職の意志があり、ご連絡させていただきました。つきましては、有給消化後、●月●日を持って退職希望の旨、お伝えいただいております」

不運にも電話を取った人は、とても驚くかと思います。

辞職は、従業員の意思をもって労働契約を一方的に解消する行為のため、代行サービス会社を経由して示された意向であっても、会社は原則として拒否することはできません。退職代行を使い、自社の従業員が退職の意思を伝えてきた場合には、以下のポイントに沿って手続きを進めます。

① あわてずに連絡先を確認、折返し対応とする

② 退職代行業者の属性を確認する

③ 労務関連の専門家や法務部との連携

④ 本人の意思表示であるかどうかを確認する

⑤ 回答書を作成する

⑥ 社内のルールに沿って、退職手続きを行う

Q即日退職は認められるか

A:多くの退職代行業者は、ユーザーに向けて「即日退職可能」とPRしています。しかし、民法では期間の定めのない雇用契約の解約について、「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と規定されており、社員から退職の申し入れがあった場合、2週間後に退職することになります。したがって、退職代行業者より「今日退職します」と連絡があっても法的に応じる必要はありません。また、就業規則で退職は1か月前申入れるなど、期間を定めている場合はそちらが優先します。

Q:引継ぎのために出社してもらいたいのですが

A:上記民法の規定から、即日退職を認める必要はないため、引継ぎのために出社を要求することは問題ありません。しかし、退職代行業者を使っている以上、本人が出社して対応してもらえる可能性は極めて低いでしょう。強引に引継ぎを求めることは、SNSで悪口を書かれるなど、会社のレピュテーションリスクにも繋がりかねないため、退職代行業者をうまく使って、円満な解決をしていくことが良いのではないかと思います。

出所:津田恵子@ベンチャー組織採用コンサルタント「退職代行業者から連絡が来たらどうすればいい?

上記出所先には詳細に事例への対応が記載されていますのでご参考下さいませ。


🔴退職代行サービスを利用した「新卒社員」の退職理由

・入職前の研修がありマナーやコミュニケーションなどの5時間ほどの研修で講師の方の脅しのような言葉、看護学生と社会人は違うとの言葉があり自信を無くしてしまった。(男性・医療関連)

・思っていた接客業務と違い、やりがいを感じる機会がないと感じた。(女性・飲食業)

・求人票に記載されていた出社時間と実際の出社時間が違った。(男性・不動産業)

・入社後に休日出勤の必要があると説明を受けた。入社前はそのような説明は一切受けていなかった。(女性・教育関連)

・勤務時間外の労働を半強制。先輩たちが休日返上で働いていたから。(男性・営業職)

・入社前に聞いていたOJTがない。(サービス業・女性)

・個人情報を記載した書類を紛失される。休み希望の日の前日に出勤を命じられる。(販売業・女性)

出所:退職代行モームリ「事例一覧」

入社前の契約内容と実際の労働環境の違いが原因での退職が多くを占めます。


🔴衛生要因と動機づけ要因

衛生要因は不満解消には繋がるが、満足度を向上させる効果は少ない

出所:グロービス経営大学院「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論


今回は退職代行サービスについて見てきました。現在の人材難の時代では、退職してもより良い条件の会社を探すこともできるからか、条件や労働環境に納得いかなければ躊躇なく退職する方も多くいらっしゃいます。企業からすれば、時間や費用をかけて求人し、せっかく入社してくれた社員に退職されてしまうのはマイナスでしかありません。法律を守り(コンプライアンス)、約束を守る(労働条件)ということが最低限のラインです。まずは会社と労働者がボタンの掛け違いをしないような仕組みづくり(共有・周知)をしてみてはいかがでしょうか。

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