🔴憲法とは
憲法には全文があります。前文は、条文本体の前に置かれ、その法令の制定の趣旨、理念、目的などを強調して述べた文章です。具体的な規範を定めるものではありませんが、各条文の解釈の基準となるものと言われています。 出所:参議院法制局「前文とその改正」
🔵前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
🔴日本国憲法の3つの原則
①国民主権
・大日本帝国憲法では、主権は天皇に置かれていました。
②平和主義
・9条で、戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は永久にこれを放棄する。と明記されています。
③基本的人権の尊重
・11条で、この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられると定められています。
🔴憲法は何条あるの?
・憲法は意外に少なく103条で構成されています。他の主な法律(六法+α)と比較してみます。
🔴憲法の中身
🔵国民の3大義務
教育の義務(第26条2項)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
勤労の義務(第27条)
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
納税の義務(第30条)
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
🔵国民の3大権利
生存権(第25条)
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
教育を受ける権利(第26条)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
参政権(第15条)
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
🔴注目されている3つの条文
第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。皇室典範:第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
🔴大日本帝国憲法
明治22年(1889年)に「大日本帝国憲法」が発布され、翌年、明治23年(1890年)に施行。大日本帝国憲法より以前の憲法はありません。
明治15年(1882)、伊藤博文は、ヨーロッパへ憲法調査に赴き、そこで君主権が強く、議会の権限が弱いドイツ(プロイセン)の憲法を学びました。当時の日本では、欧米列強に対抗するため、天皇や政府を中心とした富国強兵政策が急務でした。そのため君主権が強いプロイセン憲法は、日本の目指していた姿に合っていたのです。帰国後、伊藤博文は、井上毅、伊東巳代治、金子堅太郎等とプロイセン憲法に範をとって憲法案を起草しました。
出所:国立公文書館「大日本帝国憲法」
今週は全4回にわたって、知ってるようで知らない法律シリーズをお送りしました。私自身、社労士で学んだ法律は理解できますが、法律全般を学んだわけではない(社労士で学ぶ法律はすべて特別法)ですので、今回勉強になりました。初回で書きましたが、日本は法治国家なのに法律を学ぶ機会が少ないと感じます。今回は六法の中で、刑事訴訟法と民事訴訟法の手続法を除いてお伝えしましたが、今後機会があれば会社法や著作権法なども勉強したくなりました。