障害者が働きながら技能を身につける就労事業所が今年3月~7月に329カ所閉鎖され、その就労事業所に雇用されていた障害者5,000人が解雇や退職に追い込まれたとの報道がありました。国が収支の悪い就労事業所の報酬を今年4月に引き下げたことが要因とのこと。また、閉鎖されているのは、就労継続支援A型事業所で、雇用者数8万人以上・全国に約4,600カ所あり、1割弱が閉鎖されたと見られます。
🔴就労支援とは
大きく、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援に分かれ、就労継続支援はA型・B型の2つに分かれます
●就労移行支援:一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職 場への就労等が見込まれる者(65歳未満の者)
●就労継続支援A型(雇用型):就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な者(利用開始時、65歳未満の者)
●就労継続支援B型(非雇用型):就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される者
●就労定着支援:就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て一般就労へ移行した障害者で、就労に伴う環境変化により日常生活又は社会生活上の課題が生じている者であって、一般就労後6月を経過した者
※今回閉鎖された事業所の大半が就労支援A型(雇用型)の事業所です
出典:厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」
🔴就労継続支援A型事業所の現状
出典:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」
🔴今回の就労継続支援A型事業所、大量閉鎖・倒産の主な原因
・競争の激化と制度の変更
給付金や補助金目当てで、労働の実態が見られない悪質な事業所の増加によりサービスの質が落ちたことから、利用者への賃金及び工賃を訓練給付費から支払うことを原則禁止とした結果、事業運営が困難になった事業所が増加しました
・安定的な売上を維持するのが難しい
A型事業所は利用者と雇用契約を結ぶため、利用者に対して最低賃金額以上の給料を支払わなければならず、固定費+人件費以上の売上を上げ続ける必要があります。また物価の高騰によりコストが増加しており、その分損益分岐点が上がっています
・利用者の確保とサービス管理責任者などスタッフの確保
A型事業所の急増により利用者を確保しにくくなった+サービス管理責任者などの人員確保が困難になった事業所が増加しました
🔴障害者の解雇者数
令和6年3月~7月(5か月)のデータで例年の倍以上になっています。今回、閉鎖された「A型事業所」から解雇された利用者は、最低賃金が保障されない「B型事業所」に移行すると見られています。
🔴就労継続支援A型事業所 評価項目の見直し
出典:厚生労働省「就労継続支援A型の生産活動収支の改善と効果的な取組の評価」
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
今回、大きく報道されたことから記事にするため勉強しましたが、専門的な知識が必要な領域だと感じました。詳細をお知りになりたい方は厚生労働省のホームページや、専門機関にてご相談ください。令和7年10月1日からは就労選択支援制度も施行されます。弊所でもクライアント様からのご相談に最低限応えられるように引き続き勉強しておきます。