先日、富士通が「2026年度」から新卒一括採用を廃止するとの報道がありました。日本では新卒でなければ入社できない会社もあり、欧米のようなジョブ型採用・通年採用をしている会社は少数です。今回富士通が採用方針を見直したことで、追随する企業も出てくると思われます。今回は欧米と日本の雇用の違いや世界のトレンドなどを見ていきたいと思います。
🔴新卒一括採用と通年採用
新卒一括採用
企業が特定の時期に卒業予定の学生を集中して選考し、在学中に内定を出す雇用慣行。卒業後に一斉に入社して仕事をはじめる。終身雇用や年功賃金と一体となった日本型雇用システムの一つで、戦後の経済成長を支えた。
出所:日本経済新聞「新卒一括採用」
通年採用
企業が時期を定めることなく、1年を通じて採用をおこなうことです。世界では通年採用が一般的で、学生が自分の自由な意思でキャリアをスタートする時期を決めます。
出所:マイナビエージェント「通年採用はいつから本格導入される?」
🔴現在の新卒一括採用における就職活動のルール(原則)
大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について
現在は就職活動のルール(原則)が形骸化してきており、実際は内々定などを出す企業も多く早期化がどんどん進行しています。
出所:厚生労働省「2026(令和8)年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程」
出所:厚生労働省「若者の募集・採用等に関する指針」
出所:厚生労働省「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)について」
🔴オワハラ
企業などが新規学校卒業者等の採用において、内定や内々定を行うことと引き換えに、学生の意思に反して他の企業などへの就職活動の終了を強要するようなハラスメント行為です。
オワハラに該当する例
●自社の内(々)定と引換えに、他社への就職活動を取りやめるよう強要すること
●自由応募型の採用選考において、内(々)定と引換えに大学あるいは大学教員等からの推薦状の提出を求めること
●他社の就活が物理的にできないよう、研修等への参加を求めること
●内定承諾書等の早期提出を強要することや、内定辞退の防止を目的として、内定を承諾することについて、保護者の同意を強要すること
●内(々)定辞退を申し出たにもかかわらず、引き留めるために何度も話し合いを求めること
出所:厚生労働省「学生の職業選択の自由を侵害する「オワハラ」は行わないでください!!」
🔴学生側の意向
Q:通年募集・秋季募集を行う企業が多ければ良いと思うか?
通年募集・秋季募集が良いと思う理由TOP5(複数回答)
出所:厚生労働省「第5回 今後の若年者雇用に関する研究会」
🔴通年採用のメリット
採用の幅が広がる
欧米の卒業シーズンである6月~9月に帰国する子女や留学生など、一括採用が始まる3月のエントリーに間に合わない人材などにアプローチできます。
自社ならではの採用に時間をかけられる
募集期間が限られていないので、自社に合った人物像を明確にし、それに合致する人材を見つけやすくなります。
内定辞退が出ても対応できる
通年採用では1年を通して募集を行っているため、内定辞退があった場合でもすぐに次の採用候補者の選考ができ、内定辞退のリスクの軽減につながります。
出所:dodaキャンパス「通年採用とは?一括採用との違いやメリット・デメリットを解説」
🔴通年採用のデメリット
採用・教育にかけるコストが高くなる
通年採用では年間を通して募集と選考を行うため、その分コストもかさみます。採用広告の掲載期間も長期化し、就職活動のイベント出展の機会も増えることが想定されます。また、採用時期にばらつきがあれば研修を複数回実施することになり、教育面でもコストが膨らみます。
採用担当者の負担が大きくなる
新卒一括採用は短期集中で業務に取り組むことができますが、通年採用は常に募集と選考が行われる状態のため、そのぶん採用担当者の負担も大きくなります。採用以外の業務を兼務しているような場合は、スケジュール管理がより難しくなる可能性があります。
知名度を上げるための施策がより求められる
通年採用であっても新卒一括採用のスケジュール感を無視することはできません。多くの学生が動き出す一括採用の解禁に合わせた広報活動もしなければ学生の目に留まらず、優秀な人材との接点を失ってしまうばかりか、一括採用で内定を獲得できなかった学生の滑り止めのような立ち位置になりかねません
出所:マイナビエージェント「通年採用はいつから本格導入される? メリット・デメリットも解説」
🔴人口比率(こどもの割合)
少子化に伴って新卒学生の割合が年々減少しており、人材の争奪戦が起こっている現状です。今後は更に激しくなると予想されます。
出所:総務省「我が国のこどもの数」
今回は新卒一括採用と通年採用について概略を見てきました。明日は通年採用について深堀していきます。