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労災と損害賠償との関係 近年の労働災害とは

労災保険(労働者災害補償保険)といえば、7/10(水)期限の労働保険料の年度更新手続きをされていらっしゃる企業様も多いのではないでしょうか?

🔴労災保険とは、原則的に「従業員(アルバイトや臨時の従業員を含む)」を1人でも雇用していれば加入しなければならない強制保険です。※適用されない事業(国の直営や官公署)や任意適用の事業(農林水産の一定の事業)、適用されない者(下請負人や同居の親族など)等があります。

「保険」というものは、「保険事故」に備えてみんなが「保険料」を出し合い、事故が起こった際に「保険金」を受け取れる制度です。労災保険も保険ですので、「保険事故」に備えて会社が「保険料」を全額負担して加入します。

保険事故とは、大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」に分かれます。「業務災害」とは、労働者の「業務上」の負傷・疾病・障害・死亡のことを言います。「通勤災害」とは、労働者の「通勤」による負傷・疾病・障害・死亡のことを言います。


🔵保険料は、「事業の種類(リスクの度合い)」によって違っており、最高 8.8%~ 最低 0.25%までの間で定められており、会社が全額負担します。

たとえば、従業員10人・建設業(機械装置の組み立て又は据付けの事業:労災保険料率1000分の6.5)・年間の給与総額5,000万円だとすると、

5,000万円×0.65%=325,000円が労災保険料となります。(特例等を考慮せず)


では労災保険に加入していれば、従業員の業務災害・通勤災害に対して会社としてすべて責任を果たすかというと、そうではありません。

🔵事業主には、①労災を「防止」する義務 ②労働者に「補償」する義務 ③労働基準監督署に「報告」する義務 ④労働災害「再発防止対策」の策定・実施の義務があります。

労災を「防止」する義務

事業場における安全衛生管理体制の確立

総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任、安全委員会、衛生委員会等の設置

事業場における労働災害防止のための具体的措置

危害防止基準・安全衛生教育・就業制限・作業環境測定・健康診断

労働者に「補償」する義務

労災事故が発生した場合、当該事業主は労働基準法により補償責任を負わねばなりません。しかし、労災保険に加入している場合は、労災保険による給付が行われ、事業主は「労働基準法上の補償責任」を免れます。また場合によっては、労働基準法上の補償責任とは別に、当該労災について不法行為・債務不履行(安全配慮義務違反)などの事由により被災者等から事業主に対し「民法上の損害賠償請求」がなされることもあります。なお、この場合には、二重補填という不合理を解消するため、上記の労働基準法に基づく補償が行われたときは、その価額分は民法による損害賠償の責を免れることが労働基準法で規定されています。

労働基準監督署に「報告」する義務

事業者は、労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく、労働者死傷病報告等を労働基準監督署長に提出しなければなりません。

労働災害「再発防止対策」の策定・実施の義務

労働災害を発生させてしまった場合、災害の原因を分析し、再発防止対策を策定して実施することが重要です。


🔵労災保険で給付される保険金

(1) 療養補償給付 (2)休業補償給付 (3)その他の保険給付(障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金及び介護補償給付など)に分類されます。

これは労働基準法上の「使用者の災害補償責任」(療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償・葬祭料)に該当します。

一見、労災保険でカバーされるから安心だと思えそうですが、問題はカバーされる範囲です。

例えば、車を購入したとして、自賠責保険(強制保険)だけの加入で運転するのは心配ではないでしょうか? 自賠責保険では足りない場合があるので、ほとんどの方が自動車保険(任意保険)に加入されると思います。

それと同じで、労災保険(強制保険)で足りない部分は、民間の労災保険(任意保険)に合わせて加入されることをおすすめ致します。


🔵労災保険(強制保険)で足りない部分とは

労災保険でカバーされない逸失利益慰謝料弁護士費用などです。裁判等で損害が認定された場合、これらの費用は企業負担となります。近年では企業における「安全配慮義務」が強化され、賠償額の高額化(1億円以上の賠償も・訴訟の増加が目立っています。

労働契約法:5条(労働者の安全への配慮)

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」


🔵労災での判例・裁判例

🔴電通事件(損害賠償請求)・平成12年3月24日・全文

●長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例

🔴オタフクソース事件(損害賠償請求)・平成12年5月18日・全文

●長時間・過密な労働実態、過酷な労働環境、心身の負担が増大していること等により 、業務とうつ病発症・ 自殺の因果関係が認められ、会社の 損害賠償責任を認めた事例

🔴山田製作所事件(損害賠償請求)・平成19年10月25日・全文

●時間外労働・休日労働時間が2か月連続して1か月100時間を超え、心理的負荷・不十分な支援体制、被告企業に安全配慮義務違反があったことは明らかとされた事例


以前は労災事故というと、身体的な事故が多かったのですが、最近はメンタルヘルス疾患が増えてきています。また、職場でのパワハラやセクハラなどにより使用者責任を問われたり、不当解雇などでの労働トラブルが増加しており、使用者の悩みが深く大きくなってきています。まずは企業内でリスクを洗い出し、低減させることが先決ですが、産業医や弁護士・社労士等の専門家との連携、民間保険の活用を含めた意思決定も重要になってきています。

出典:厚生労働省「雇用・労働」

出典:裁判所「労働事件裁判例集」

参考:主な労働事件・最高裁判例集

日新火災 労災あんしん保険パンフレット

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