先日、ある企業の経営者お二人が人事についてお話されておりました。
A社長:最近、手の焼ける社員が入ってきて困ってるんです。B社長とこはどうですか?
B社長:うちにも何人か仕事が遅い社員や、手の焼ける社員がいてるよ!
A社長:他の社員に悪影響やから、今後契約を見直そうと思ってるんです。
B社長:そんなことしても、全員が理想の働き方をしてくれるとは限れへんで。規模が大きくなってきたらそういう社員も絶対出てくるねん。働きアリの法則や!
🔴働きアリの法則とは
アリのコロニーにおける労働分担の観察から得られた法則です。具体的には、アリのコロニーでは、全体の約20%のアリが非常に活発に働き、60%のアリが普通に働き、残りの20%のアリはほとんど働かないという分布が見られます。この法則は、組織やチームにおいても同様の傾向が見られることから、人間社会にも応用されています。後述するパレートの法則から派生しました。
例えば
・働きアリのうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくる。
・働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリはサボっている。
・よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になる。
・よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになり、全体としてはまた2:6:2の分担になる。
・よく働いているアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に分かれる。
・サボっているアリだけを集めると、一部が働きだし、やはり2:6:2に分かれる。
🔴パレートの法則(20:80の法則)とは
全体の80%の成果が20%の要因から生まれるという原則です。この法則は、経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱されました。パレート氏はヨーロッパにおける経済統計の分布を調査したところ「全体の富の8割を上位2割の人口が保有しており、8割の人口で残りの2割を分けている」という所得分布の経験則を発見しました。その後、ビジネスや経済、時間管理など様々な分野で広く適用されています。
例えば
・ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。
・商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。これにより、企業は人気商品の在庫を増やし、マーケティングリソースを集中させることができます
・仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している。これにより、重要なタスクに集中することで効率的に成果を上げることができます
その他
・故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。
・売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。
・所得税の8割は、課税対象者の2割が担っている。
・プログラムの処理にかかる時間の80%はコード全体の20%の部分が占める。
・全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。
・結果の80%は、取り組んだ時間の20%で生み出している。
・20%の顧客が、口コミの80%を投稿している。など
🔴両法則に対する批判
🔵働きアリの法則に対する批判
固定的な割合の問題:働きアリの法則は、常に2割が非常に活発に働き、6割が普通に働き、2割がほとんど働かないとしていますが、実際の組織ではこの割合が変動することがあります。状況や環境によっては、全員が同じように働くこともあります。
個々の能力や意欲を無視:この法則は、個々の能力や意欲を考慮せず、自然に形成されるパターンとして捉えています。しかし、実際の職場では個々のスキルやモチベーションが大きく影響します。
怠け者の存在:法則によれば、2割のアリがほとんど働かないとされていますが、これを人間社会に当てはめると、怠け者と見なされる人々が存在することになります。これが組織の士気や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
リストラの誤解:下位2割の社員をリストラすることで問題が解決するという誤解が生じることがありますが、実際には新たな2割が低い成果にとどまる可能性が高いです。
🔵パレートの法則に対する批判
過度の単純化:パレートの法則は、全体の80%の成果が20%の要因によって生み出されるとしていますが、これは過度に単純化された見方であり、実際のビジネスや経済の複雑さを反映していない場合があります。
適用範囲の限界:この法則は、すべての状況に適用できるわけではありません。特定の業界や状況では、80:20の割合が当てはまらないこともあります。
リソースの偏り:パレートの法則に基づいてリソースを集中させると、他の重要な要素や人材が見過ごされる可能性があります。これにより、組織全体のバランスが崩れることがあります。
企業にとってヒトの問題・リソースの問題というのは一番重要な部分で、スタッフ全員が要領よく思い通りに動いて欲しいというのは経営者にとって理想ではありますが、少なからずこういう法則性も頭にいれながら全体を見渡すことで、改善すべきポイント・経営手法も見えてくるのではと思います。