想いをカタチに│東大阪市のDreamin’社労士事務所 │東大阪市・大阪市・八尾市・大東市

想いをカタチに!働きやすい職場づくりをサポート

電話
メール
LINE

今年も労働保険、社会保険の更新の季節がやってきました

新年度の慌ただしさが少し落ち着き、初夏の風を感じる季節となりました。しかし、企業の人事・労務担当者の皆様にとっては、ここからが「魔の夏」の始まりとも言える時期ではないでしょうか。毎年6月から7月にかけて、企業は「労働保険の年度更新(年更)」と「社会保険の算定基礎届(算定)」という、1年で最も重要な労務手続きを行う必要があります。この手続きを正確に行わないと、会社が納める保険料に過不足が生じ、従業員の将来の年金給付等にも影響を及ぼしてしまいます。今回は、この「年更」と「算定」について、どのような制度なのか、そしてなぜ毎年この時期に行うのかという歴史的背景を交えながら、見ていきたいと思います。


「労働保険」と「社会保険」

会社が加入する公的な保険は、大きく「労働保険」と「社会保険」の2つに分かれます。まずはそれぞれの特徴と、誰が保険料を負担しているのかを整理してみましょう。

労働保険

労働保険は、「労災保険」と「雇用保険」の総称です。主に働く環境でのリスクや、失業時のセーフティネットとして機能します。

・労働者災害補償保険(労災保険): 業務中や通勤中のケガ・病気を補償します。(全額会社負担)

・雇用保険: 失業時の給付や、育児休業給付、能力開発などを支援します。(会社と従業員で、それぞれの割合に応じて負担)

社会保険

狭義の社会保険は、医療、介護、年金など、日常生活の根幹を支える制度の集まりです。

・健康保険: 業務外のケガ・病気、出産などに対する給付を行います。(会社と従業員で折半)

・介護保険: 40歳以上の従業員から徴収され、将来の介護費用を支えます。(会社と従業員で折半)

・厚生年金保険: 老後の生活資金や、障害・遺族に対する年金を給付します。(会社と従業員で折半)

・子ども・子育て拠出金: 児童手当等の財源に充てられます。(全額会社負担)

子ども・子育て支援金【2026年NEW: 令和8年(2026年)4月から段階的に徴収が開始された新しい制度です。少子化対策の財源として、医療保険料に上乗せして徴収されます。(会社と従業員で折半)

このように、保険の種類によって「全額会社負担」のものと「労使折半」のものがあり、会社の財務においても非常に重要なウェイトを占めています。


毎年の恒例行事:「年更」と「算定」

それでは、これらの保険料はどのように決まり、いつ納付するのでしょうか。「年更」と「算定」の違いを見ていきます。

労働保険の「年度更新(年更)」とは?

労働保険は「前年4月〜当年3月」の1年間に従業員へ支払った賃金の総額から保険料を計算します。しかし、年度の途中では正確な賃金総額が分からないため、まず「今年度はこれくらい支払うだろう」という【見込み額】で概算保険料を前払いします。そして翌年、実際の支払額が確定した段階で過不足を【精算】し、また次年度の【見込み額】と一緒に申告・納付します。この「前年度の精算」と「今年度の前払い」を毎年6月1日〜7月10日の間に一斉に行う手続きが「年度更新(年更)」です。

社会保険の「算定基礎(算定)」とは?

一方、社会保険料は毎月の給与から天引きされますが、給与は残業代などで毎月変動します。そのたびに保険料の計算を変えていては事務処理がパンクしてしまうため、社会保険では「標準報酬月額」という仮の等級(テーブル)に給与を当てはめて保険料を固定します。この等級を見直すのが「算定基礎(算定)」です。具体的には、「当年4月・5月・6月」に支払われた給与の平均額を計算し、その年の9月以降の1年間の保険料(等級)を決定します。この手続きも、毎年7月1日〜7月10日の間に行われます。


なぜこの時期に?手続きの「歴史」と「背景」

今でこそ当たり前のように毎年夏に行われている「年更」と「算定」ですが、制度が始まった当初から今の形だったわけではありません。その歴史を紐解くと、国の制度設計の変遷が見えてきます。

年度更新(年更)の歴史:なぜ夏に行うことになったのか?

現在のように労災保険と雇用保険を一つにまとめて徴収する仕組みは、昭和44年(1969年)に「労働保険徴収法」が制定されたことで始まりました。それまでは別々の窓口で手続きを行っており、企業の負担が膨大だったためです。実は、長らく年度更新の時期は「4月1日〜5月20日」でした。しかし、年度末決算や入退社が重なる春先に労働保険の手続きまで行うのは企業にとって大変な負担でした。そこで、平成21年(2009年)に法改正が行われ、「社会保険の算定時期(7月)と近づけて、夏に手続きを集中させよう」という目的で、現在の「6月1日〜7月10日」に変更されました。

出典:千葉労働局「労働保険料年度更新(申告・納付)手続きの時期の変更と 保険料率の改定について

国としては「時期をまとめて効率化しよう」という配慮だったのですが、結果として労務担当者はこの1ヶ月強の間に2つの巨大な手続きを同時にこなさなければならなくなり、これが「魔の夏」と呼ばれる所以となっています。

算定基礎(算定)の歴史:大正時代から続く仕組みと「総報酬制」

算定基礎の「給与を等級に当てはめる」という仕組みは非常に古く、大正11年(1922年)に制定された健康保険法にまで遡ります。長い歴史の中で最も大きな転換点となったのが、平成15年(2003年)に導入された「総報酬制」です。それまでは、毎月の給与には高い保険料率がかけられていましたが、ボーナス(賞与)にはわずかな特別保険料しかかかっていませんでした。そのため、「毎月の給与を極端に下げて、その分をボーナスで支給して社会保険料を逃れる」という抜け道が存在していました。

これを是正し、年金財政を安定させるため、「毎月の給与からも、ボーナスからも、同じ料率で保険料を徴収する」という現在のルール(総報酬制)に変更されたのです。また、総報酬制以前は、5月・6月・7月だった算定月が4月・5月・6月に変更となりました。

出典:厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律等の施行について

出典:厚生労働省「総報酬制の導入等に伴う通知の一部改正について


今年度の実務における注意点(2026年最新トピック)

本年度(2026年度)の算定・給与計算において最も注意すべきなのは、4月から本格導入された「子ども・子育て支援金」です。これまで全額会社負担だった「子ども・子育て拠出金」とは異なり、新たな「支援金」は医療保険料(健康保険料等)に上乗せされる形で、労使折半で徴収されます。従業員の給与明細上の控除額が変わっている(あるいは今後変わる)ため、「手取りが減った」という従業員からの問い合わせが増える可能性があります。実務担当者の皆様は、この「支援金」の趣旨や徴収の仕組みについて、社内への周知を丁寧に行うことをお勧めいたします。 出典:弊所記事「子ども・子育て支援金について

正確な手続きは、従業員との信頼関係の証

「年更」や「算定」は、毎年繰り返されるルーティン業務ではありますが、決して単なる「作業」ではありません。労働保険の適切な申告は、万が一の労災事故や失業から従業員を守る命綱であり、社会保険の正確な算定は、従業員の将来の年金受給額に直結します。つまり、これらの業務は「会社が従業員の生活と未来を守るための大切な土台作り」なのです。


今回は、「労働保険の年度更新(年更)」と「社会保険の算定基礎届(算定)」について見てきました。まさに今から取り組まれるという企業様も多いのではないでしょうか。計算には、残業代や通勤手当の含め方、パートタイマーの取り扱いなど、複雑なルールが数多く存在します。少しでもご不安な点や、計算の負担を軽減したいとお考えの場合は、ぜひ私たち社会保険労務士にご相談ください。専門家として、正確かつ迅速に、皆様の「魔の夏」をサポートさせていただきます。

弊所からのお知らせ

  1. 登録されている記事はございません。
PAGE TOP