本日(4月7日)はアメリカによる関税の影響を受け、日経平均株価が歴代3番目の下げ幅(-2644円)を記録しました。昨年8月5日に日銀の利上げとアメリカの景気後退のニュースが重なりブラックマンデーを超える歴代最大の下げ幅(-4451円)を記録しましたが、翌日には一転(+3217円)しその後も上昇に転じました。今回も不安に駆られてのパニック売りはあったと思われますが、この問題は少し長引きそうな気も致します。今回はこの混乱を引き起こしたアメリカの貿易政策とデミニミス・ルールについて見ていきたいと思います。
🔴トランプ大統領によるアメリカ第一主義貿易政策
上記を実現するための具体的な取り組みが「24のセクション」に分かれて記載されており、報告書全体は非公開ですが、概要が公開されています。
大枠で下記の3点が記載されており
その中で特に重要だと思われるセクションが下記になります
貿易赤字について
貿易赤字は、米国が貿易相手国からどのように扱われているかについての根本的な不公平性と互恵性の欠如を示している。米国が関税を低く抑え、経済を開放してきた何十年もの間、貿易相手国は米国の製品およびサービスに甚だしい関税および非関税障壁を課してきた。これらの不公平で非互恵的な貿易慣行は米国の競争力を損ない、事業の閉鎖、雇用の喪失、米国輸出業者の市場機会の喪失、産業能力の喪失、および米国の防衛産業基盤と国家安全保障態勢の衰退につながっている。
不公平で非互恵的な貿易慣行
多くの国は、米国がそれらの国からの輸入に課しているよりも高い関税を米国の輸出に課している。米国の平均実行関税は3.3%である。しかし、欧州連合(EU)(5%)、中国(7.5%)、ベトナム(9.4%)、インド(17%)、ブラジル(11.2%)の平均関税はすべてそれよりも高くなっている。貿易相手国が米国に対して不当な貿易優位性を得るために、消費削減政策(賃金抑制、労働、環境、規制の裁定取引など)を意図的に追求しているためである。これが今度は、米国の大規模で永続的な貿易赤字の一因となっている。
デミニミス・ルールの見直し
現在、1人の人物が1日に輸入した800ドル以下の輸入品を含む荷物は、無税で米国に入国できる。米国は、この免税のデミミニス・ルールを廃止すべきである。この例外により、2024年だけで約108億ドルの関税収入が失われている。デミミニス貨物は、米国に重大な安全保障上のリスクももたらしている。デミミニス・ルールは、フェンタニル、偽造品、およびさまざまな致死性および高リスク製品をほとんど精査されることなく米国に入国させる手段である
米国輸出管理の見直し
米国は、自国の先進技術が敵国に流出しないようにしなければなりません。輸出管理は、AIにおける米国の優位性を促進し、世界的な技術的リーダーシップを主張しながら、よりシンプルかつ厳格で効果的なものにする必要があります。
出所:ホワイトハウス「アメリカ第一主義貿易政策に関する大統領への報告書 概要」
🔴デミニミスとは
上記の記事を見て、恥ずかしながら「デミニミス」という言葉を初めて知りました。
デミニミスとは、小口輸入品に対する「関税免除」措置のことで国によって免除の金額が違います。
主な国のデミニミス値
出所:ZONOS「国別デミニミス値」
※最近は中国企業の「SHEIN」や「Temu」、「AliExpress」などが低価格の商品を販売しており、国内市場が影響を受けているのを看過できなくなり、規制に動く国が増えてきています。
EUやアメリカなどは、中国に対してデミニミスを適用しないような措置を検討しています。
出所:ブルームバーグ「中国・香港に適用の少額輸入免税措置、米が撤廃へ-TemuやSHEINに打撃」
出所:ロイター「米、中国・香港からの小口輸入品免税を5月2日廃止=大統領令」
🔴アメリカの主な輸入品・輸出品(金額順・単位:百万ドル・2023年)
輸出
輸入
出所:JETRO「米国の主要品目別輸出入〈通関ベース〉」
今回はアメリカの貿易政策とデミニミス・ルールについて見てきました。相互関税に関しては現状誰も得をしていない(みんな損をしている)状態になっています。一方的な措置は理解を得られませんし、アメリカが孤立してしまうリスクもあります。記事を書いている23時現在ではNYダウが1700ドルを超える下落となっており、明日の日本市場にも悪影響を及ぼしそうな気配です。この状態が長引き世界的な恐慌にならないことを祈るばかりです。