労働法って名前からして難しそうで、しかも法律なんて考えたくもない人も多いのではないでしょうか?弊所も社労士事務所でなかったら、労働法に触れることも少なく、その重要さに気づかないままだったと思います。本日、厚生労働省から解りやすい動画「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」が公開されました。基本的には労働者向けの動画となっていますが、経営者の方や人事・総務をご担当されている方にも知識の再確認にご利用いただけると感じましたので、今回共有させて頂ければと思います。
🔴労働法とは
労働法という法律があるわけではなく、労働基準法や労働契約法、労働者災害補償保険法、雇用保険法など労働に関して必要となる法律の総称を労働法と呼んでいます。
主な労働法
※労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律・雇用対策法から名称変更)など長くなるので、一部の法律は略称を使用しています。
出所:e-Gov「法令検索」
🔴労働法各法の目的(第1条)
労働関係調整法
この法律は、労働組合法と相まって、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて経済の興隆に寄与することを目的とする。
労働基準法
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。
職業安定法
この法律は、労働施策総合推進法と相まって、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
労働組合法
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
最低賃金法
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
障害者雇用促進法
この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
労働施策総合推進法
この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
高年齢者雇用安定法
この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
雇用保険法
雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
労働安全衛生法
この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
男女雇用機会均等法
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
労働者派遣法
この法律は、職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。
育児介護休業法
この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。
パートタイム労働法
この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
労働契約法
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
出所:e-Gov「法令検索」
上記が主な労働法各法の目的となります。法律というのは解釈が難しいので、使用者や労働者の間で解釈に相違があった場合は、裁判などで争われるケースもあり、その結果が具体的な「判例・裁判例」として法律の補完的な役割を担う事もあります。
🔴これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~
解りづらい労働法をまんが(動画)で解りやすく解説しています。
Q1.「求人広告」に良い条件がたくさん書いてあるけどそのまま信用して大丈夫?
Q2.面接で即採用、「給料は働きぶりを見て決める」って言われたけど、これってあり?
Q3.入社日の直前になって会社の業績悪化を理由に内定取消……これってあり?
Q6.毎日遅くまで残業させられる上に残業代が全然出ない……これってあり?
Q7.「ライブに行きたいという理由で有給休暇は取れません!……これってあり?
Q8.「妊娠したら辞めてもらう」って言われたんだけど……これってあり?
Q9.仕事中にケガ。治療費は自己負担って言われたけど、これってあり?
Q10.働き方の違いって……?
Q11.働き方の違いによって待遇が違う?
Q12.過労死ってなんだろう……?
Q13.ミスが原因で「もう明日から来なくていい」って……これってあり?
Q14.会社を辞めようとしたけど辞めさせてもらえない……これってあり?
その他. コラム.働く人のための相談窓口
厚生労働省 公式アカウント
今回は労働法について見てきました。文字の方が理解しやすい人、映像の方が理解しやすい人など各人それぞれです。就業規則一つとっても、解りにくいので誰も見ていないというケースもよく聞きます。使用者と労働者の争いもルールが浸透していないせいでボタンを掛け違えていることも往々にしてあります。制度2割・運用8割という言葉もあります。せっかくいい制度があっても周知・運用されていなければ宝の持ち腐れです。その意味でも、今回は厚生労働省ですが、公的機関はとても解りやすい資料を無料で提供してくれているので、ぜひご活用下さいませ。